VOICE18| 2022年8月
時と緑が響きあうガーデンホテル
キラキラ光る海辺のすぐ近く、色とりどりの緑が茂る小道をくぐり抜けると、赤い屋根とグレージュの壁の家が見えてきます。どこか懐かしい風合いと軽やかな風が抜けるこの場所は、結婚式場・レストラン・ホテルと多様な時間を過ごせるガーデンホテルです。年月を経た建物はコンバーションによりクラシカルなホテルへ姿を変えました。運営する株式会社GREENINGの菅原様にお話をお聞きしました。
─ 鎌倉市由比ガ浜 BIRD HOTEL GARDEN HOUSE
- 住 所:
- 鎌倉市由比ガ浜
- 構 造:
- 敷地面積:
- 建築面積:
- 延床面積:
- 581.01㎡
- 建築事務所:
- 株式会社シー・デザイン一級建築士事務所
- 設計監理:
Q. 建物の使い心地やお客様の声はいかがですか?
植栽と建物のバランスが良く、とても気持ちがいいですね。スタッフも皆、とても気に入っています。もともと70年代の建物をコンバーションしているのですが、建物の持つ雰囲気を残した仕上がりで、ここにしかない空気感が出せたと思います。入口が小さいので、お客様は最初入りづらいようですが、小道を進んでいただくと“こんなに気持ちよい場所があったのね!”と、喜んで貰えています。この辺りでは席数が多いレストランはなかなか無いので、地元の方にも好評で週に2~3回来て下さる方もいらっしゃいます。街に根付いていけたら良いなと思っています。
Q. 様々なエリアがありますが、お気に入りスポットとその魅力を教えてください。
入口から開けたエリアの雰囲気がいいなと思います。植栽と建物の織りなす感じがいいですね。既存の色を活かした屋根の赤色も味があります。正面入口からすぐにBarカウンターが広がっているのですが、その雰囲気もとても好きです。宿泊では予約のリピートも出始めていて、お客様には客室も気に入っていただけていると感じています。ペットと一緒に泊まれることも喜んでいただけているのではないでしょうか。
Q. 今回のコンバーションを行ってみて、いかがでしたか。
最初はお化け屋敷のような状態だったので、ここまでの変貌は凄いなと感じていますし、面白かったです。元々を活かした良さは数々あります。先ず、創業者が植栽と建物の感じが好きだったことから「ガーデンハウス」という名を付けたように、庭があったのでこの場所に決めました。その上で、今の植物は選定からこだわって作りこんでいます。また、扉のステンドグラスは再利用ですし、屋根はそのままの色で塗装し直しています。新築だと似たような感じになりがちですが、改修の方がそこにしかない空気感があり、ここもその良さがでていると思います。僕たちは、古い物件を良くして後世に繋げていく方が、環境に良いし味もあると思っています。
Q. キクシマに依頼してみていかがでしたか。
キクシマさんは私たちの要望に対して、「無理です。出来ません。」という事が基本的にありませんでした。僕たちはホテルとウェディングの業態は初めてで経験が無く、工期的に“ここは急いで決めないと”という瞬間もありましたが、「もう遅いのでそれは出来ません。」という返答にはならなかった。施工会社によっては結構あるのですが、キクシマさんの場合は出来る限り実現しようとしてくれました。また、施工中だけでなく、開業後のアフターサービスも早い対応で凄く良くして下さり、お願いして良かったなと思っています。
Q. 最後に、このような建築・空間を作り上げるために、大事だと思う事をお聞かせください。
“あまり作りこみ過ぎないこと”が大事だと思います。コンバーションは建物が元々あり、経過した年月の空気感があってこそだと思うので、遣り過ぎると良さが無くなってしまいますし、この場所の意味が消えてしまう。デザインしすぎず華美にしすぎないことで、元々の良さと新しい良さを出せるのではと思います。また、チームでどれだけ同じイメージを共有出来るかも大事です。今回、本当に細部までイメージしないといけない事を痛感しました。作って完成ではなく営業してからがスタートなので、スタッフの実際の使いやすさや、お客様の居心地の良さまで考えないといけない。それは僕一人がイメージ出来てもダメで、皆に伝えてフィードバックをもらってより良くするという遣り取りで出来上がりました。コンバーションは出来る事と出来ない事があります。制限がある中でイメージするのは難しさでもあり面白さでもありますね。ここはイメージ通りに出来て、皆が気に入っていて本当に良かったです。
担当者から
バードホテルは、鎌倉からスタートした“ガーデンハウス”の新しい業態として生まれたオーベルジュです。元々社員寮だった一軒家を改修・用途変更し、緑溢れるガーデンが際立つクラシックなホテルになりました。和と洋を合わせた多様な植栽は美しく重なり、赤い瓦屋根に重厚な扉、ステンドグラスが光る建物は洒脱で、既存の庭と家の良さを最大限引き出しながら、流れる時と緑の響きあいを味わえる空間が広がっています。枯渇していた場所に可能性を見出したのは先導となった菅原様のセンスがありますが、そこを活かし作られた世界観はチームの結束力の結晶でしょう。建物も緑も新たな役割を得て喜んでいるように感じるのは、継承し開拓するという菅原様たちの優しさが根底にあるからかもしれません。本日は、様々なお話しをありがとうございました。