VOICE15| 2019年3月

日常に美を感じて暮す家

葉山の丘の上に建つ木色の美しい家。緑と空間の重なりが緩やかに外と内を繋ぎ、心地よい調和をもたらしています。ここは、建築家八木様ご夫婦の自邸。心身がほぐれるような澄んだ空間の秘密はどこにあるのでしょう。お二人にお話しをお聞きしました。

─ 三浦郡 葉山の家

住  所:
三浦郡葉山町
構  造:
木造 地上2階建て
敷地面積:
338.93㎡ 
建築面積:
126.66㎡
延床面積:
187.37㎡ 
建築事務所:
八木建築研究所
設計監理:
八木建築研究所

Q. そろそろ2年ほど経ちますが、改めて住み心地はいかがでしょうか。

このみさん「とても心地よく、毎日が幸せです。“自分達らしい空間”、“日常の一瞬一瞬に美しさを感じる”、ただそれだけで幸せでいられます。」正嗣さん「遠景の山から庭、中庭、土間のダイニングへと自然のつながりが感じられて、とても良いですね。妻や子供たちも気に入ってくれて良かったです。」このみさん「自分で設計した家に住むのは初めてですが、今までやってきた事は間違っていなかったと思います。これまでの設計で良かった点、やってみたかったことなどを盛り込み、改めてその良さを実感しました。」正嗣さん「そういう視点だと、設計上の不安要素の確認作業もしています。樋を無くしたり、コーナー窓のシングルガラスの結露など。結果、それ程問題にはならない事がほとんどでした。」

Q. 特に気に入っている所やこの家で良かったなと思う所はありますか?

このみさん「リビングのソファは、家全体を感じることが出来て好きですね。家と庭の奥行きと広がりを最も感じる特等席です。塀がないことで道路や周囲の山までその広がりがつながります。」正嗣さん「仕事場からキッチンを見るのが好きです。夕方になると、ぼんやり温かい灯りがつき、中庭とガラス越しに見ると、ショーケースのように見えます。窓から外気のフィルター越しに自分の家が見えるというのは不思議とよいものです。」

Q. キクシマに依頼してみていかがでしたか?

正嗣さん「家づくりは色々な事がありますが、キクシマさんは会社として最終的に責任を持って対応してくれます。一般的な注文住宅を作る際、工務店さん選びは難しい所があるんですね。大きい会社だと、小さい住宅にきちんと向き合ってくれるか不安がありますし、お一人や少人数の小さい工務店さんだと、人との相性で上手くいかない事もあります。場合によっては、“これは出来ない”ばかりで、やりたい事を諦める方向へ進む事もあります。キクシマさんは、担当者で対応が難しければ、上の人が打ち合わせに参加してくれましたし、皆が納得できる方法を一緒に考えてくれて、どうやって上手く進めるかという姿勢で最善を尽くし、最後まで仕事を遂行してくれました。以前にも一緒に建物を作っていますが、今回は改めてそういう良さを噛み締めました。色んな経験をされて、会社として進化されておられるとも感じました。」

Q. ステイホームの多い今の時世、とても理想的な住まいに感じますね。

このみさん「コロナ禍でも快適に暮らせています。事務所兼自宅ですので、職住が一体で、ワークスタイルを変える必要はありませんでした。また、ステイホームで家に籠っていても、開放感のある作りで窮屈さが無く、一切ストレスは感じませんでした。」正嗣さん「以前住んでいた古い平屋の家では建て混んだ周囲が影響して、ずっと家に居るとストレスがありましたが、この家では無いですね。料理研究家の母が使う事もあり、様々な“場所”が集まった作りになっているので、シーンを切り替えることが出来、家にずっと居ても飽きない良さがあります。」

Q. 最後に、お二人にとって「家づくりで大切」と思う事をお聞かせください。

このみさん「私は、お一人お一人の施主様との出会いを大切にしています。その方に自分がなったつもりで、どのような家を望み、必要としているのかと考えます。」 正嗣さん「私の場合、自分の目線で見つつ、その人らしさと敷地環境という条件の下、自分が何を作れるかを考えて提示することを大事にしています。また、設計というものは様々な要素を整理する作業でもあるんですね。複雑に絡み合った要素を紐解き、本質的に必要なものを見極め、トータルなデザインとして全体をまとめるということを大切にしています。」

担当者から

八木様邸は塀をつくらず、植栽で緩やかに外と繋がっています。1階は一面に窓が広がり、家の中に居ながら外にいるような、抜けた空気感に溢れていて、のびやかな心地よさに包まれています。キッチン、リビング、事務所、寝室と様々な空間が集合して一つの建物になる事で、一軒の家の中であらゆる表情が楽しめるように。山々の緑と木壁の赤茶色のコントラスト、橙色の灯りが浮かぶ夕刻の情景と、周りの環境との調和も美しく、外を歩く人にさえ安らぎをもたらしているようでした。建築家の自邸と聞くと言わずもがな素敵であり、着々と進行すると思いがちですが、多くの経験をしているお二人だからこそ、家づくりの深い楽しさと難しさがあり、竣工までの道のりは困難の連続だったと伺えます。この家で感じられる唯一無二の美しさと居心地のよさは、それらを乗り越え完遂するという熱意が成したものなのでしょう。第一声で、「毎日が幸せ」とほほ笑むこのみさんの姿がとても印象的でした。本日は、沢山の貴重なお話をありがとうございました。

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